【ボルゴグラード(ロシア南部)=田村雄】ロシア南部ボルゴグラードで29日、30日と連続して起きた交通機関を狙った爆弾テロは、ソチ冬季五輪を約40日後に控えたプーチン政権への挑戦だ。
テロの標的となった都市はさらなるテロへの不安と緊張感に包まれている。
ボルゴグラードでは10月から3件の爆弾テロが相次いだ。ボルゴグラードは、国際空港、モスクワなどの主要都市に向かう長距離の鉄道とバスの駅がある露南部の中心都市だ。冬季五輪が開幕するソチは、ここから南に約700キロ・メートルだ。
プーチン政権は、テロで五輪を妨害すると公言するイスラム過激派の拠点である北カフカス地域で過激派の掃討作戦を展開し、武力によるテロ封じ込めをめざしてきた。テロ対策を担当する治安機関の幹部らが出席し24日に開かれた会議では、テロに関連した78件の犯行を防いで260人の過激派メンバーを殺害し、320個の爆発物を押収したなど2013年の成果が報告された。
しかし、ボルゴグラード市民には、足となる鉄道や公共交通機関で立て続けに起きたテロに不安が広がる。トロリーバスは自爆テロがあった駅から約3キロ・メートルの食料品店やカフェが並ぶ市場の隣で発生。停留所から発車後まもなく爆発した。
トロリーバスの自爆テロ現場近くに住むリュドミラ・コワリョワさん(60)は「治安対策を強化したのにテロは起きた」とショックを隠せない。テロ再発を恐れた市民がトロリーバスの乗車を避け、市内ではがらんとしたトロリーバスが何台も走っていた。
29日にテロが起きた駅でも、警備が一層強化された。駅前の約500平方メートルの広場や爆発が起きた建物は完全に封鎖され、多くの警察官と兵士が立つ。建物に向けカメラを構えるだけで兵士と駅職員に「撮るな。許可はあるのか」と制止を受けた。これまで切符がなくても入れたプラットホームは、切符がなければ入れず、軍関係者に遮られた。
ボルゴグラードの鉄道駅でモスクワ行きの列車を待っていた会社員ドミトリー・レスキンさん(38)は「テロを防ごうとしても防ぎきれないと感じた。(ボルゴグラードのような)大都市ではなおさらだ」と話した。
一方、空港には小銃を持った警官が数多く配置され、出入り口ではベルトを外し、バッグだけでなく携帯電話や財布も金属探知機を通すよう命じられる。
「今は公共交通機関を使うのが怖い。次は空港でテロが起きるかもしれない。一刻も早く飛び立ちたい」。ボルゴグラード空港で新年の休暇を過ごすエジプトへの出発便を待っていた、会社員ナタリヤ・ロマキナさん(28)は緊張した表情で話した。
(2013年12月31日10時37分 読売新聞)
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